エイプリルフールとアクセシビリティ
これは、学生だった頃、インターネットでエイプリルフールの特集を見ていた時にふと懸念した事で、当時は「アクセシビリティ」という言葉を知らなかったし、ここまでエイプリルフールが加熱するとは思いもしなかった。
しかし、毎年エイプリルフールを迎える度にこの事を思い出し、懸念は深まるばかりである。
近年、「障害者」を「障がい者」と書く傾向にあるが、私は「害」という言葉を除いた所で、言葉を使う者が「障がい者」という言葉を差別的に使う限り、差別はなくならないと考えている。
「障害者」は「障害」を持った「者」であり、決して「害」を持った「者」ではない。
漢字が与える印象が悪いからと言って「障がい者」と書き変えた所でなんの問題解決にもならない。
過去には、「精神分裂病」が「統合失調症」と呼び変えられた例があるが、これも同様で「精神分裂病」という言葉を差別的に使用していた者が居たように「統合失調症」という言葉を差別的に使用する者が居ればなんの解決にもならない。
ただし、「精神分裂病」という名称のため、「統合失調症」に対する偏見が助長されていた歴史があるため、「障がい者」と一律に比較する事ができないが...。
また、情報処理上・アクセシビリティ上も「障がい者」は余り良い影響を与えるとは思えない。
上記の事から、この記事では以後、「障がい者」ではなく敢えて「障害者」と記述することをお断りしておく。
年々その内容は凝る一方で、一見しただけでは嘘なのかどうかも見分けがつかない場合がある。
4月1日を過ぎて、うっかりエイプリルフール用のニュースリリースを開いてしまうと信じてしまいそうになる。
サイトによっては、最後まで読まないと気付きにくかったり、下手をするとURLの中に「april」や「0401」の文字を見ないとわからない場合もある。
エイプリルフールを過ぎると削除される場合もあれば、「この企画は終了しました」というような内容に置き換わる所もあるが、そのまま手を加えず残している場合もある。
エイプリルフールのニュースリリースの中で、よくできた特設ページと思う今でも読めるものを挙げてみよう。
確かに「この特集は終了しました。」とは書いてはいるが、特集がエイプリルフールだとは書いていない。
読み方によっては、『「宇宙広告プロジェクト2002」の特集が終了した』ようにもとれる。
ウェブブラウジングに音声ブラウザ・スクリーンリーダーを使用している視覚障害者、あるいは知的障害者はどうだろうか。
(ウェブサイトの識別についての話題のため、内蔵疾患や四肢の障害等を持っている方々はここでは健常者側としている。もしかすると、視覚及び分析能力の障害を総称するような用語があるのかもしれないが、私の無知故的確な用語を思いつかなかったためお許し頂きたい。)
既に書いたが、サイトがエイプリルフールのページの面白さを競うようになり、段々と内容がリアルになってきている。
次にあげるのは今年のエイプリルフールの特設ページである。
またYahoo! JAPANの例で関係者には申し訳ないが、エイプリルフールの特設ページとして良くできている挙げさせて頂く。
ふたつ目のページは、ひとつ目のページで映像が流れた後に表示される。
このページでは、「スタジオカラーからのメッセージ」内に「エープリルフール企画」、右上に表示される日付の横に小さく「(エープリルフール)」、フッタの近くの協力した企業のところと更に下のコピーライト付近に「エープリルフール」の文字がある。
しかも、ヱヴァンゲリヲンとの企画のため、黒と白と赤を基調としたコントラストが非常に強いページである。
赤が強烈に目に映えるため、白く書かれた文字が若干目立たなくなっている。
(読む時は白い文字が読みやすいが、意識しないと赤い文字にばかり意識が向いてしまう。)
悪い事に「エープリルフール」と書かれているのは、全て白い文字である。
このような状態は健常者でも気付きにくい状態であるのに、障害を持っている方々が情報の真偽を容易に判断できるとは思えない。
また、HTMLを見るとスクリーンリーダーにも辛い構成となっている。
ひとつ目のページのHTML上では、全162行中149行目まで辿らなければならない。
ふたつ目のページのHTML上で言うと、全375行中、189行目、318行目、361行目に当たる。
(「スタジオカラーからのメッセージ」は227行目に当たるが、FlashであるためHTML上では判断できない。)
機会があれば、アクセシビリティの観点から一度ご覧になって頂きたい。
これは障害者に留まらず、健常者にとっても同様である。
将来、特設ページが閲覧される可能性も考慮すると尚更だ。
また、当ブログのような個人サイトならともかく、ニュースサイトやポータルサイト内に極わずかではあるが、誰もがそれが真実と認めないエイプリルフールの特設ページがその他のページと混在しているのは問題ではないだろうか。
エイプリルフール用の折角の特設ページを消してしまうのはもったいない。
ただ、容易に判断できれば良いのではないだろうか。
例えば、meta要素やマイクロフォーマットに埋め込む方法が考えられる。
但し、機械的に処理するために各サイトで統一する必要がある。
また、これらを処理するブラウザ側の対応が必要になってくる。
これは大掛かりであるし、全体の足並みが揃わなければ実現できないであろうからあまり現実的ではない。
エコマークやグリーンマークのようなアイコンを作成する。
エコマークのような淡い色ではなく、目立つデザインが良いと思う。
ただし、サイトのデザインもあるため、色は規定せず(但しコントラストの規定は必要)に形状を目立つようにしたほうが良いのかもしれない。
形状に重きを置き、色を柔軟にしているのは、後述する表示位置を考慮しているためである。
このアイコンは個人でも企業でも自由に利用できるようにするため、パブリックドメインが望ましい。
パブリックドメインであれば、全てのエイプリルフールの特設サイトで統一したものを使用できるよう促す事ができないだろうか。
クリエイティブコモンでないのは、未だにクリエイティブコモンに対しての理解が得られない企業が存在すると思われるため、普及促進を優先してパブリックドメインとする。
次がこのアイディアの重要な部分かもしれない。
このアイコンを次のようなタグで表示させる。
重要なのは、スクリーンリーダーが認識するalt属性とその値である。
そして、タグを埋め込む場所は、body要素の直下の一番最初か本文の先頭部分が良い。
この位置であれば、アイコンを探すのが比較的容易であるし、スクリーンリーダーに対しても効果的だろう。
もちろん、もっと良いアイディアがあればと思う。
ふたつ目のアイディアは、現場の努力で実現できるレベルであると思うので、普及しないだろうかと考えて(妄想して)いる。
後、誰がどのようなアイコンを作成するか...。